構造設計を本で勉強しても実務ができない理由|現役プロが教える「本の真の活用術」

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構造設計の勉強を始めたものの、「専門書の内容が実務に結びつかない」「一度読んだはずなのに、ソフトを前にすると手が止まる」と悩んではいないでしょうか。

ここで多くの人が「本の読み込みが足りないんだ。もう一度最初から読んで覚え直そう。」という思考に陥ります。しかし、どれほど時間をかけて精読しても、実務で使わない知識はすぐにこぼれ落ちてしまいます。

最短距離で「戦力」になるために必要なのは、暗記のための読書ではなく、実務の成果物から逆算して本を「道具」として使い倒す技術です。

ストラボ小林
ストラボ小林
構造設計を本だけで学ぶのは、例えるなら「本を読んで自転車に乗れるようになろうとする」ようなもの。私の経験から、もっとも効率のよい本の活用勉強法をお伝えします!

\構造設計者のためのプラットフォーム/

1. なぜ「読み込むほど」設計ができなくなるのか?

構造力学の公式を覚え、検定式を理解しても、実際の物件を前にすると手が止まってしまう。この原因は、「情報のインプット」と「実務の判断」が切り離されているからです。

「理解してから手を動かそう」とすると、膨大な専門知識の海に溺れ、いつまで経ってもアウトプットに辿り着けません。構造設計の本質は、計算そのものではなく、複雑な条件の中で「どのリスクを許容し、どの安全性を優先するか」を判断することにあります。

この「判断の作法」は、受動的に本を読み返すだけでは、決して身につきません。初めて自転車に乗った時のように、「まずは乗ってみる(手を動かす)」ことが不可欠なのです。

2. ベテラン構造設計者が実践する「実務習得」の3ステップ

効率が良い構造設計の学習方法は、実は驚くほどシンプルです。構造設計を身に付ける勉強法は、いわゆる「解答を見る →問題や影響度を理解する → テキストを読む」という逆算型の勉強法に近いステップです。

ステップ1:過去の計算書を「トレース」する(=解答を見る)

自社の過去物件の計算書を、一貫計算ソフトにそのまま入力します。まずは理屈抜きで、プロが作ったものと「同じ結果」を出すことだけを目指します。

ステップ2:なぜこうなるのか?を検証する(=問題や影響度を理解する)

トレース中に「この検討あるいは入力は何をしていて、どういう状態がOKなんだろう?」と疑問が湧いた時、本を開くのではなく、検証をします。ソフトを使っているものは数字を変えて結果を見比べてみる。そうすることで、影響度が分かってきます。

たとえばRCの小梁がもたない場合に鉄筋を足すのか、断面を大きくするのか。
どちらの方法でもOKの状態にすることはできますが、効率や影響つまり合理的な設計は何かというのは検証を繰り返すことで身体に沁みついていきます。それでも腑に落ちない場合には構造設計者の先輩に聞きます。

ストラボ小林
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答えがあるかわからない本を何時間も読むよりも、まずはプロから正解を教えてもらうのが優先です。先輩から「あの本に書いてあったよ」と教えてもらえる場合もあるかもしれません。遅い時間で先輩がもう帰ってたら、しぶしぶ自分で探すしかないけど……。

ステップ3:あとから「本」で裏付けを確認する(=テキストを読む)

過程で躓いたところや、理解が足りないと感じた部分は必ずノートなどにメモして残しておきましょう。後でその「疑問のストック」を本で引き直してじっくり考える。この実務での違和感を放置せず、後で理論と紐付ける習慣が、数年後の実力に大きな差をつけます。

「実務での疑問 → 解決 → 本での裏付け」。この順序を繰り返すことで、バラバラだった知識が繋がり、生きた実力として積み上がっていきます。

納期に追われる実務の真っ只中で、一項目ずつ本で調べながら設計を進める余裕がない時もあります。 そんな時は、「まずは先輩の設計をお手本にし、納期に間に合わせること」を最優先にしてください。プロとして形にすることは何より大切です。

ストラボ小林
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新人時代の勉強法は、電算を触ってみたり、基本的な力学の応用から考えたり、なんで電算の応力図がこうなるかを先輩に聞いたりしてた。基準書は読むけど、図解書・演習書は学生時代と、一級建築士の勉強以外のことにはほとんど使わなかったなぁ。

3. 【おすすめ参考書8つ】構造設計者が教える本の真の活用術

構造設計の勉強は、特定の数冊を完璧に読み込むことから始めるわけではありません。目の前の実務で生じた「なぜ?」を解決するために、その都度必要な本を部分的に引きます。

このプロセスを繰り返すうちに、気がつけば結果的に何冊もの専門書を読みこなし、生きた知見として蓄積されていくのです。

ストラボ小林
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私が使ってきた本をいくつか紹介します。100冊以上は読んできましたが、1冊を熟読するというよりは、付箋を貼って必要な時だけ辞書のように使い、繰り返し調べながら自分の中に知識として落とし込んでいく、という活用をしていました。

現場必携 建築構造ポケットブック(共立出版)

各種構造の定数、材料強度、部材データ、略算式までが1冊に凝縮されたハンディな資料集。
正直、この本を一番開いたと思います。実務者が取り扱う計算式や材料データまで幅広い内容が本当に過不足なくまとまっている。打合せ中や電算前の概算など、何をするにもまずはこれ。

建築物の構造関係技術基準解説書(日本行政情報センター)

建築基準法等の構造関係規定に基づき、計算方法や建築構造に関わるあらゆる技術基準を公式に解説した、通称「黄色本(きいろぼん)」。
行政や審査機関から「法的根拠」を求められた際の最終回答として使います。通読はせず、目次から必要な項目へ即座にアクセスできるよう付箋を貼りまくり、審査員との共通言語として活用します。

鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説(日本建築学会)

日本建築学会:規準・同解説シリーズ(RC造・S造など)。各構造種別の設計ルールが数式レベルで詳細に記された、業界の標準指針。
計算ソフトの出力結果が「標準的な設計」の範囲に収まっているか確認する際の拠り所です。手計算で部材の妥当性を検証したいとき、必要な数式のページだけをコピーしてノートに貼り、設計根拠として残します。

鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説(日本建築学会)

構造計算で出した鉄筋を、現場で「どう組むべきか」に特化した指針です。
計算上は成立していても、現場で「この本数は入らない」というトラブルは避けなければなりません。納まりの限界値を調べるために、図面の詳細を描く際や現場からの質問回答で頻繁に開きます。

構造計算適合性判定を踏まえた建築物の構造設計実務のポイント(日本建築センター)

適判審査での指摘事例に基づき、設計者が留意すべき点や誤解しやすい判断基準をまとめたガイド。
設計がひと段落したタイミングで、審査で突っ込まれそうな箇所がないか、チェックリスト代わりに使います。これを踏まえて先回りして補足説明を付けておくことで、審査のやり取りをスムーズにします。

建築基礎構造設計指針(日本建築学会)

地盤の支持力や杭の計算式など、基礎設計における理論的根拠が網羅された学会規準。
「計算式そのものの根拠」が必要な時に開きます。地耐力の算定式など、ソフトの計算プロセスを自分で追いかけたり、審査機関に「この式で算定しています」と証明したりするための、いわば「基礎の法律」です。

実務から見た基礎構造設計

地盤調査報告書の読み方から杭種の選定、現場でのトラブル対応まで、実務フローに沿って解説された実用書。
規準書には載っていない「判断のコツ」を知るために使います。地盤調査データを見て「杭にするか地盤改良にするか」といった方針を決めるときや、現場で予期せぬ地層が出てきたときの落としどころを探る際、経験の浅さを補ってくれる一冊です。

初めての建築構造設計 構造計算の進め方

準備から一貫計算、図面化までのフローを体系的に追った実務入門書です。S造、RC造、階段などの雑物の検討まで詳しく解説されています。
数多くの図表と対話形式による解説が取り入れられているので、構造設計を学び始めた方、新人構造設計者は一読してみてもいいかもしれません。
ストラボ小林
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必要なページだけコピーを取ってノートにまとめ、自分専用の資料集としてまとめる勉強法がおすすめです。

4. 独学の限界と埋まらない「実務の判断」

本をメインにする勉強方法は非効率、という事実をお伝えしてきましたが、さらに、構造設計には本だけでは解決できない「実務の3つの壁」が存在することを説明します。

・計算ソフトが出力する「警告(ワーニング)」の判断

ソフトが吐き出す多くの警告。それが「計算モデル上無視して良いもの」か「致命的な不備」か。この実務上の許容範囲を見極める基準は、どの専門書にも載っていません。

・部材サイズにおける「妥当性」の感覚

計算上はOKでも、その断面が施工や経済性の観点から適正かどうか。こうした現場条件に照らした落としどころを養う術は、本の中には見当たりません。

・審査機関を納得させる「設計ストーリー」

質疑に対し、自らの設計根拠を論理的に説明し、納得させる力。これは計算作業ではなく、生きた知見を繋ぎ合わせて「安全性の根拠」を編み出す技術です。

5. まとめ|悩み抜いた今だからこそ選べる「近道」がある

本などで自習し、構造設計に自分の力だけで挑もうとする姿勢は、設計者として大切な資質です。
構造設計は、自転車と同じです。転びながらコツを掴むのが最短ですが、すぐそばに「正しい見本」や「いつでも質問できる先輩」がいるかどうかで、習得スピードは劇的に変わります。

もし、あなたが「一人で勉強するのは限界だ」と感じているなら、外部のサポートを借りることも検討してみてください。
何年もかけて自力で乗り越えられる道もあれば、あらかじめ「実務の正解」を知った上で、最短距離で成長できる道もあります。

実務特化型学習サービス「ストラボschool」

ストラボschoolは、独学でぶつかる「知識と実務の壁」を解消するために生まれました。
一人で悩み、時間を浪費する前に。効率的に学習を進め、一日も早く「自信を持って設計ができる構造設計者」への第一歩を踏み出しませんか?

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監修者

小林 玄彦(こばやし はるひこ)
株式会社ストラボ 代表取締役

さくら構造株式会社の社長室室長として10年間、採用活動や評価制度の構築、組織マネジメントに従事。
オリジナル工法の開発やブランディングにも注力し、創業期から同社の規模拡大に貢献。
2024年に株式会社ストラボを創業し、構造設計者のための成長支援プラットフォーム「ストラボ」をローンチ。
構造設計者の社会的価値を最大化することを使命とし、構造設計業界や組織、そこで働く社員が価値観を共有し、他社との差別化を図ることで、構造設計者の価値を誇りをもって伝えられるようサポートしている。

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