
こんにちは!現役の構造設計者であり、株式会社ストラボ代表の小林です。
今回のストラボ通信では、「なぜ、有名な建築家は意匠設計者ばかりなのか?」という、テーマについてお話ししたいと思います。
建築に関わりのない人にまで知られているような建築家に、構造設計者の名前が挙がらないのはなぜか。考えたことはありますか?
今回はバッシング覚悟で、正直な胸の内と私の目標についてお話しします。
有名な建築家といえば、誰?
「有名な建築家といえば?」と聞かれた時、皆さんは誰を思い浮かべますか?
私の場合は、安藤忠雄氏が最初に頭に浮かびます。明確な理由はないのですが、おそらく建築学生時代に使っていた教科書に載っていた記憶が強いからでしょう。
では「構造設計業界の安藤忠雄」といえば誰でしょう?
私の場合は、木村俊彦氏ですね。梅田スカイビル、京都駅ビル、公立はこだて未来大学などの構造設計を手がけた方です。
これも世代的な理由が大きいかもしれませんが、先ほど名前を挙げた安藤忠雄氏の作品の構造設計も手がけており、複雑な意匠デザインを現実に落とし込むその設計力には尊敬しかありません。
私自身は、マンションや倉庫といった実用的な建物を設計することが多かったので、ランドマーク級の建物に携わる仕事には、ちょっとした憧れがあります。
「あれ、自分が建てたんだよ」と言えたら格好いいなぁ、と思ったり。
有名な建築家、皆さんなら誰を思い浮かべますか?
なぜこのような問いを皆さんに投げかけたかというと、「社会的に認知度の高い建築士って、意匠設計者ばかりだよね」という現実に、皆さんと一緒に向き合いたかったからです。
構造設計者が「有名」になれない理由
結論から言うと、構造設計者が単独で表舞台に立つような状況が、今のところあり得ないから、です。
建築に関心が無い一般の方が、なぜ一部の建築家のことだけは知っているのか?
それは、「印象的な建物のデザインだから」もしくはテレビやニュースで取り上げられるような「有名な建物を手がけた人だから」という場合がほとんどです。
しかし、構造設計は意匠デザインのように、一般の方にとって直感的にわかりやすいものではありません。もし、メディアが建物の優れた構造設計を取り上げたとしても、一般の方のウケはよくないことは簡単に想像できます。とはいっても、自分がよく知らない分野においては、見た目で「すごい」と感じられないものに強い関心を持つことは難しいですよね。
テレビで話題になるようなランドマークなどの建築プロジェクトは、「良いものを造りたい」という純粋な想いだけでなく、それはもう、様々な立場の人の思惑が複雑に絡み合います。
そうなると、まず注目を集めるために話題性のある人に白羽の矢が立ちます。建物を建てる側も、誰もが耳にしたことがある大手ゼネコンが複数社タッグを組みます。
このことから、話題性が重要視されるプロジェクトのスタート地点において、構造設計者が入り込む余地は今のところ無いというのが、私の分析です。
建築業界の人間として、少し正直な話をさせてもらうと……「テレビで取り上げられるほどの建物だから、その設計者はすごい人だ」と一般の方は無意識にそう思い込まされてしまっているような気がします。逆に、「有名な建築家が監修しているから、その建物はすごい」という現象もあると思います。
もちろん、有名な建築家の方々は、それに相応する実力を持ち合わせていることは間違いありませんよ!
目指せ!小学生の「なりたい職業ランキング」入り
ストラボを起ち上げたきっかけを、私は何度も「構造設計者の地位向上」と言い続けてきました。
具体的にどのくらいの地位まで向上させたいのかというと、「小学生のなりたい職業ランキングTOP10」に入るくらいに有名になれたらいいと思っています。
今でも「建築士」や「サラリーマン」はランキングに入ることはありますが、「構造設計者」としてTOP10に食い込むくらいに知名度を上げたいです。そこまでいけば、「有名な建築家といえば?」という問いに一般の方から構造設計者の名前が挙がるのも夢じゃないですよね。
ただし、どれほど優れた技術力や熱い想いがあっても、存在が知られなければ尊敬もされないし、正しく理解されることもありません。
ランドマーク級の建物はもちろん、一定規模以上の建物の設計には必ず構造設計者(構造設計一級建築士)の関与が法律で定められています。あらゆる建物の完成の陰には、人々の命を守る構造設計者がいて、技術と誇りを持って仕事をしている。だからこそ、構造設計は「誰かに」ではなく「この人にやってほしい」と思われる社会にしたいと考えています。
ストラボを通して、構造設計者が社会に果たす役割の大きさを発信し続け、「小学生のなりたい職業ランキングTOP10」を目指します!
今後も「ストラボ通信」では、構造設計者の現状分析や特有の悩みなど、構造設計に関する様々な情報を発信していきます。またお会いしましょう!
執筆者

小林 玄彦(こばやし はるひこ)
株式会社ストラボ 代表取締役
オリジナル工法の開発やブランディングにも注力し、創業期から同社の規模拡大に貢献。
2024年に株式会社ストラボを創業し、構造設計者のための成長支援プラットフォーム「ストラボ」をローンチ。
構造設計者の社会的価値を最大化することを使命とし、構造設計業界や組織、そこで働く社員が価値観を共有し、他社との差別化を図ることで、構造設計者の価値を誇りをもって伝えられるようサポートしている。