脱・価格競争。提案力強化で売上2.1倍を実現した構造設計事務所の事例|ストラボgrowth

クライアントの課題|長年の「値上げできない悩み」

構造設計事務所を創業して5年、従業員20人未満の小規模事務所様の事例です。

高い構造設計技術力を持ちながらも、「価格競争に巻き込まれて設計料を値上げできない」 「どうすれば値上げに納得してもらえるのかわからない」という悩みを抱えておられました。自分たちの技術と提供価値を正当に評価してほしい、という思いからストラボへご相談いただきました。

ストラボのコンサルティング内容|「技術を言葉にする力」で差別化

「他社がやっていないことをやる」をテーマに、クライアント企業の強みである技術力に加えて、顧客とのコミュニケーションを重視する差別化戦略をご提案しました。
※ここでいう「顧客」は意匠設計事務所やゼネコンといった、一般的な構造設計事務所にとっての直接の取引相手だけでなく、その先の「施主」まで含めることを前提とします。

多くの構造設計事務所が、意匠設計事務所やゼネコンからの指示に基づき、ある意味「受身」で、構造計算プログラムで数字を出すことに終始する中、私たちは、意匠設計事務所やゼネコンの指示の意図、さらには施主の意向・希望まであえて踏み込むことで、顧客の要望を深く掘り下げるようにアドバイスを行いました。

なぜこの構造設計である必要があるのか、なぜこの躯体が必要なのか、などについて顧客の要望に沿って説明し、それらを実現できるクライアント企業の技術に説得力・訴求力を持たせることで、他社との差別化を狙いました。
そのためにも、まずはクライアント企業の構造設計に対する姿勢を明確にする必要がありました。協議を重ねた結果、構造設計の核には「構造設計は審査を通すためではなく、お客様のご要望を叶え、命と安全を守るためにある」という強い理念があることが明らかになりました。

この理念は、クライアント企業が社会的評価だけに固執せず、真摯に社会的使命を追求してきた職人的な姿勢を具体化したものでした。私たちは、この「真摯さ」こそが、顧客の課題を見抜く「ニーズを見抜く力」につながり、期待以上の成果を生み出す源泉であると捉えました。

このプロセスを通じて、自分たちの価値を言葉にする重要性を会社全体で共有しました。

そのうえで、営業担当や設計担当には

  • 「リビングダイニングとして家族団らんの時間を過ごしてほしいこちらの部屋は、意匠担当の●●さんにもご協力いただき、構造的に必要な躯体を踏まえつつ、空間を邪魔しないように柱を配置しました」
  • 「工期短縮と意匠上の柱を細くしたいという要望には、高強度の鋼材と、現場作業を減らせるプレキャスト工法の採用を提案します。これによりデザイン性・耐震性を両立しながらコスト削減もできます」
  • 「この地域で懸念される地震後の事業中断リスク回避のため、早期機能回復が可能な免震構造の採用を提案します。そのコスト増を吸収するために、資材高騰の影響を最小限に抑えられるよう主要部材の早期選定・発注を可能とする構造図を作成しました」

など、納品物だけでなくその設計に込めた意図、つまり「構造設計のストーリー」をセットで伝えることで、技術に説得力を持たせることに注力いただきました。

コンサルティングの成果とその後|売上が3年で2.1倍に

取り組み開始から1・2年目はコミュニケーション力の醸成や機会の獲得などの試行錯誤を繰り返しましたが、3年目には明らかな成果が出始めました。

  • 問い合わせが2倍に増加
  • 受注率は1.4倍に向上
  • 設計単価は1.5倍に上昇

結果として、売上は2.1倍にまで向上しました。

売上倍増の背景には、以下のような好循環がありました。

STEP1 元請けの受注率に貢献
クライアント企業の構造設計を採用した元請け事業者(意匠設計事務所やゼネコン)から施主に対する提供価値が高まり、元請け事業者の受注率が向上した。

STEP2 指名される存在へ成長
クライアント企業の取組・構造設計に対する姿勢が元請け事業者や施主の潜在的ニーズに届くことで、この会社と仕事がしたい、この会社にしかお願いできないという印象を与えることに成功し、両者から指名される機会が増えた。

STEP3 価格交渉で設計料を値上げ
指名される機会が増えたことで、自信を持ってクライアント企業の価値=高い技術力を訴求できるようになり、結果的に営業の場面で価格交渉がスムーズに進んだ。

技術力に裏付けられた「伝える力」を磨くことで、指名による受注が増え、技術を安売りすることなく適正な報酬を得られるようになりました。

こうして、単なる構造計算業務の請負業者という位置付けから脱却し、お客様のビジョンを共に実現する“協創”パートナーへと、企業の価値を高めることができたのです。

お客様の声

「コンサルティングを受ける前は、技術力はあっても『なぜこの設計が必要なのか』をうまく伝えられませんでした。今ではお客様との対話を通じて信頼関係を築けるようになり、自信を持って適正な価格を提示できるようになりました。

この事業拡大成功を機に、それまで踏み切れなかった設計技術者の増員にも着手、実現できました。今後はさらなる事業拡大を目指します。」


ストラボgrowthは構造設計事務所に特化した経営支援サービスです。

経験豊富なコンサルタントが創業から、人事・組織、財務・会計、DX・情報戦略、さらには事業承継まで、経営戦略における幅広い領域を多角的に支援しています。

監修者

ストラボgrowthコンサルタント
酒井 和輝(さかい かずき)
さかいビジネスコンサルタント事務所代表

【資格】中小企業診断士、ITコーディネータ、SAP FI(財務会計)認定コンサルタント

メーカー系システム開発会社にてSEとして、オンライン制御システムや経済産業省ICカード実証実験におけるポイント管理システムなどを開発。2008年よりプライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(株)にて、経営システム導入や業務プロセス改善、新規事業立ち上げなどに従事。2018年に「さかいビジネスコンサルタント事務所」を設立。創業、経営改善、DX、事業承継、事業継続力強化など、多岐にわたるコンサルティングを提供。経営者向けセミナー講師も務める。