
構造設計で「仕事ができる人」は、知識量や計算の速さよりも、「ミスを防ぎ、設計を正しく進める行動」が自然と取れる人だと思いませんか?「優秀さの核心はどこにあるのか?」を現場目線で掘り下げると、見えてくるのは才能ではなく、日々の習慣の質です。本記事では、若手からベテランまで通用する、ミスを劇的に減らす5つの行動習慣と具体的な改善方法を、現場のリアルな感覚と共にご紹介します。
構造設計で「仕事ができる人」とは?|仕事の質を変える5つの行動習慣
「仕事ができる構造設計者」と聞くと、あなたはどんな人を思い浮かべますか?
図面作図が早い人、知識が豊富な人、ミスが少ない人など、いろいろなタイプの設計者がいますが、実際の現場で長く信頼され続けている構造設計者に共通しているのは“技術力の高さ”そのものではありません。
1.1. 一人で頑張るほど、なぜか手戻りが増える構造設計の現実
構造設計の現場では、 「できるだけ自分で判断しなくては」 「簡単なことを聞くのは恥ずかしい」と思って動いた結果、後半で大きな手戻りになるケースが少なくありません。
実は、構造設計で起きる手戻り原因の多くは、能力不足ではなく、仕事の進め方そのものにあります。
構造設計は、一度決めた前提や判断が、計算・図面・審査・施工へと連鎖していく仕事です。
だからこそ、多少時間がかかっても「ズレない進め方」を選べる人のほうが、結果的に評価されます。
「仕事ができる」と言われる構造設計者は、常に完璧な判断をしているわけではありません。
大きな失敗に発展しない形で、仕事をコントロールしているのです。
この視点を持つだけで、「できる人」と「できない人」の差が少しずつ見えてきます。

1.2. 仕事ができる構造設計者に共通する「5つの行動習慣」とは?
仕事ができる構造設計者は、案件の難易度が上がっても成果を安定させられる「5つの行動習慣」を持っています。
- ミスを減らす工夫を続ける
- タスクを整理し、期限から逆算して進める
- 迷ったら早く相談できる
- 結果に大きく影響を与えるポイントを把握し先回りしてつぶしておく ミスや不安を正直に伝える
- 条件を正確に読み取り、思い込みを避ける
これらは特別な才能ではなく、習慣として身につけられます。
次の章から、習慣を「どう身につけるか」を解説します。
2.行動習慣1|ミスを減らす工夫を続ける
構造設計で多くの人が悩むのが、「なぜか凡ミスが減らない」という問題です。
入力ミスや条件の見落としに気をつけているはずなのに、計算と図面が合わない、前提がズレていた―そんな手戻りを繰り返していませんか?
実は、構造設計の凡ミスの多くは注意力不足ではなく、「作業の進め方」によって起きています。
ここでは、できる人とできない人のやり方と対比して整理します。
2.1. できる構造設計者は“作業とチェック”を切り分けてミスを防ぐ
できる構造設計者は、作業に集中する時間とチェックに集中する時間を、明確に切り分けています。
作業モードのままだと視野が狭くなり、自分の入力ミスや前提条件の抜けに気づきにくいものです。
構造設計は一つの見落としが計算や図面全体に影響する仕事です。いったん手を止めて「作業」と「チェック」の時間を分けるだけで、ミスは減っていきます。

2.2. できない構造設計者は条件の整理をしないまま作業をすすめる
できない構造設計者に共通するのが、前提が固まる前に手を動かしてしまうことです。
断面算定を急ぐあまり、納まり、荷重条件、剛性入力、剛域、支点条件といった前提条件の整理をしないまま作業を進めてしまうのです。
この状態では途中で条件のズレが表面化し、計算のやり直しや図面との不整合が一気に発生します。
「この前もこれで大丈夫だったから」と過去物件を安易に流用したり、意匠側の変更に気づかず解析を続けてしまうなど、心当たりはありませんか?
つまり、できない人が招くミスの多くは、「能力不足」ではなく「順番を間違えている」ことに由来します。
前提を整えてから着手するだけで、ミスは減らせます。
2.3. 凡ミスを減らすためのチェックルーティン
ミスが少ない構造設計者ほど、必ず「ミスを避ける仕組み」──つまり自分なりのチェックルーティンを持っています。大切なのは、気合や注意力ではなく、ミスが起きにくい流れをつくることです。
- 解析前に「剛性・剛域・荷重条件」を必ず確認する
→ 前提条件のズレによる手戻りが減ります。 - 計算と図面の照合は「毎回同じ順番」で行う
→ 手順を固定することで抜け漏れを防ぎやすくなります。 - 週のどこかに「自己チェック日」を設ける
→ 作業モードから一度離れることで小さなミスに気づきやすくなります。
3. 行動習慣2|タスクを整理し、期限から逆算して進める
構造設計では、納期は作業量ではなく段取りの精度で決まります。
図面・計算・審査対応など複数の工程が同時に動くなか、優先順位を誤ると一気に間に合わなくなってしまいます。
一方で、忙しさが同じでも常に落ち着いて進められる人がいます。その違いは、タスク管理にあります。
3.1. できる構造設計者は「作業内容」と「締切」を分けて見える化している
納期に追われない構造設計者は、「作業内容」と「締切」を分けて整理しています。
案件ごとに、「どんな作業があるのか」「それぞれがいつまでに必要なのか」を整理し、「いつ・何を終わらせるべきか」を常に把握しています。
結果として、修正依頼や審査対応が重なる繁忙期でも、焦らず作業が進められるようになるのです。

3.2. できない構造設計者は“急がなくていい作業”から手をつけてしまう
仕事が追いつかなくなる原因は、仕事の整理の仕方にあります。
優先順位を決めずに作業へ着手してしまうため、実は急がなくていい作業に時間を割き、本当に必要な工程に着手するのが遅れてしまうのです。
その結果、「間に合わない」と気づくのは締切直前となります。
また、ヘルプを申し出られても残りのタスクを説明できず、他者との連携が難しくなります。
タスクが頭の中だけに散らばっていて、自分でも全体像を把握できていない状態です。
3.3. 構造設計者向けタスク整理
タスク管理で大切なのは、ツールや細かい管理方法ではなく「整理する順番」です。
タスクを整理する習慣が身につくと、忙しい時期でも慌てずに進められるようになります。
- まずは“見える化”する
担当案件ごとに作業内容・締切・必要工数を書き出します。全体像がつかめるだけで、着手の迷いが減ります。 - “案件”ごとではなく“締切順”に並べ替える
複数案件を締切順に「ひとつのリスト」にします。異なる作業でも、締切を揃えると優先順位が一気に明確になります。 - 作業ごとに“作業時間”を入れる
30分・1時間など大まかでOK。所要時間が見えると、工程の詰まりが予測でき、前倒し判断がしやすくなります。 - 1週間で“完了させるタスク”を決めておく
「今週はここまで終わらせる」とタスクを明確にすると、手戻りや無理な詰め込みが減ります。
4. 行動習慣3|迷ったら早く相談できる
構造設計の現場では、同じ経験年数でも成長スピードに大きな差が出ます。
その違いを生んでいるのが、知識量よりも「相談の使い方」です。
相談ができる人とできない人では、仕事の進め方に明確な差が出ます。
4.1. できる構造設計者は“5分の相談”でミスを防ぐ
できる構造設計者は、相談を「正解に近づくための手段」だと理解しています。
- 迷ったら早めに相談する
- 気軽に相談できる相手を複数人作る
- 内容に応じて相談相手を使い分ける
- 「相談=品質と納期を守る手段」と理解している
たとえば、ある新人構造設計者は「この仮定断面で本当にいけるか?」と少し不安を覚え、先輩に5分だけ相談したところ、その場で前提条件の誤りに気づき、大きな修正に発展する前に止めることができました。
できる構造設計者は相談を使いこなし、ミスを初期段階で発見・修正しています。

4.2. できない構造設計者は一人で考え込み手戻りを生む
相談が遅れる人には、共通する典型的なパターンがあります。
- 「今聞いたら迷惑かな?」と遠慮してしまう
- 相談できる人が一人しかおらず、その人が不在だと作業が止まる
- 自分の判断に自信が持てず、修正に修正を重ねる
- 結果として手戻りが増え、納期遅れやコスト増につながる
意匠側の変更が解析条件に反映されているか不安を感じながらも「もう少し進めてから聞こう」と考え、誰にも確認しないまま解析を続けた結果、後半で条件不整合が発覚し、計算と図面をほぼ丸ごと修正することになったケースもあります。不安を感じた段階で、5分相談していれば、初期のうちに軌道修正できた可能性が高いです。
4.3. 相談相手を決めておくと迷わない
相談がスムーズな構造設計者は、あらかじめ「この内容はこの人に聞く」という自分なりのルールを決めています。
- 納まり→Aさん
- 荷重条件→Bさん
- モデル化・剛域→Cさん
- 審査のクセ→Dさん
- 杭、地盤のこと→Eさん
内容ごとに相談する人を決めておくだけで、迷う時間が大幅に減ります。
仕事の流れが劇的に変わり、タスクの詰まりがほとんどなくなるでしょう。
特に杭業者は、担当者によってはベテラン構造設計者よりもはるかに知識や経験を多く持っている人も存在します。
そういう人と関係性を築いておくと仕事が圧倒的にやりやすくなります。
5.行動習慣4|結果に大きく影響を与えるポイントを把握し先回りする
構造設計の現場で「信頼できる設計者」かどうかは、技術力だけで決まるわけではありません。
トラブル時の初動や、日々の小さな約束をどう扱うかが、信頼や評価を大きく左右します。
この章では、責任感と正直さが信頼につながる理由を整理します。
5.1 責任感がある構造設計者は「最初の対応」が速い
トラブルの気配を感じた瞬間に動けるかどうか、責任感のある構造設計者ほど、この最初の一歩が圧倒的に速いのが特徴です。
ためらわずに共有し、すぐに調整に入れる人ほど、周囲が安心して判断を委ねられる存在になります。
- 小さな違和感の段階で、すぐに関係者へ共有する
- クレームが入れば、その日のうちに状況整理と方針を提示する
- 一時的な対応で終わらせず、再発防止策まで含めて説明する
開口部の納まりに不整合が見つかった際、担当の構造設計者が即座に状況を報告したことで、意匠・施工とその日のうちに調整が完了し、施工スケジュールへの影響は最小限で収まったケ―スがあります。
初動の速さは「この人に任せておけば大丈夫」という信頼につながります。

5.2. 無責任な構造設計者は“隠す・遅らせる”で現場に負荷をかける
一方で、無責任な構造設計者は、周囲に負担をかけてしまいます。
- 小さなミスや違和感を報告しない
- 「あとで直せばいい」と判断を先延ばしにする
- 問われた時に経緯や判断理由を説明できず、不信感を招く
納まりのズレに気づきながら共有を先延ばしにした結果、施工側から「工事が進まない」と指摘され、最終的には意匠変更・柱梁の設計変更・工期遅延が重なる事態に発展したケースもあります。
だからこそ、責任感の欠如は致命的です。
5.3. 小さな約束を守れる人が“個人指名”される構造設計者になる
正直さは、日々の“小さな約束”を守る姿勢にも表れます。信頼される構造設計者ほど、どんな小さな約束も大切にしています。
- 納期を必ず守る
- 返信をその日のうちに返す
- 会議や打合せに遅刻しない
- 図面提出のルールを守る
- 「やると言ったこと」を確実にやる
これらを積み重ねるほど、クライアントの信頼は強くなります。
案件は「会社」に任せているようで、実際には“あなた”という個人への信頼があるからこそ依頼されるのです。
組織の中においても社内だからとか、身内だからと約束を守るハードルを下げてしまう人がいます。
これは小さな信頼をどんどん失っていき、結果として大きな仕事を任せてもらうチャンスや成長の機会を自分から手放すことになります。
6. 行動習慣5|条件を正確に読み取り、思い込みを避ける
構造設計のミスや手戻りの多くは、計算力不足ではなく条件の読み違いや思い込みから生まれます。
できる構造設計者は、物件ごとの条件を正確に整理し、判断に迷う場面ほど慎重に確認しています。
この章では、設計品質を安定させる「正確に把握する力」について掘り下げます。
6.1. できる構造設計者は条件をゼロベースで整理して判断している
できる構造設計者に共通しているのは、物件ごとの条件は必ず違うという前提で丁寧に整理する習慣です。
- 「この物件では何が求められているのか」をゼロベースでヒアリングする
- 過去物件と似ていても、構造形式・階高・外装材・施工条件を見直す
- 意匠・施工・審査、それぞれの視点で押さえる点を確認する
- “理解したつもり”で進めない
条件を紙に書き出して整理してから設計に入るようにすると、手戻りが減り、審査での質問も減りやすくなります。
こうした“考える前の整理”が、正確な判断につながります。

6.2. できない構造設計者は「前回と同じ」という思い込みで判断を誤る
一方、できない構造設計者は、条件の違いを深く見ずに「この前もこんな感じだったから」と思い込みで手を動かしてしまいます。
- 仮定断面を“絶対”だと思い込み、過剰鉄筋になる
- 過去物件の詳細図を、そのまま別物件に流用する
- 意匠変更や施工条件をよく見ずに解析を進める
- 「大丈夫だろう」で判断し、後半で不整合に気づく
前回と同じ外装材だと思い込んで断面を設定したところ、実際は面材仕様が異なっており、鉄骨量が大幅に増える過剰設計になった例もあります。
6.3. 判断に迷う場面ほど、根拠の整理と早めの確認が大切
構造設計には、白黒がはっきりしない判断を迫られる場面が必ずあります。
そうした場面では、感覚で決めず、判断根拠を整理し必要な相手に早めに確認することで、後半の手戻りを防ぐことができます。
1)自分なりの“判断の根拠メモ”を残す
次の項目についてメモを残しておくと、後から説明するときに迷わずクリアに回答でき、審査・社内レビューが驚くほどスムーズになります。
- どのガイドラインを根拠にしているか
- どの条件で、どちらの解釈を採用したか
- 過去の審査ではどう扱われたか
- 意匠・施工の意図と整合しているか
2)グレーな判断ほど“早めの確認”を欠かさない
審査段階での大きなNGや、梁・柱寸法変更によるコスト増、意匠側の再設計、納期遅延の連鎖は、「初期の確認」で回避できることが少なくありません。
審査では設計そのものだけでなく、“説明の仕方”が問われる場面もあります。だからこそ、誤解を生まないように整えておく姿勢が、最終的な品質を左右します。
7. 選ばれる構造設計者になるために|5つの行動習慣をセルフチェック
ここまで、構造設計で「仕事ができる人」と言われるために必要な5つの行動習慣を見てきました。
どれも特別な才能ではなく、日々の仕事の進め方や向き合い方によって身につけられるものです。
日々の習慣の質の高さが、そのまま“個としての価値”につながるのが構造設計という仕事です。
7.1. 5つの行動習慣をセルフチェックする
次の5つを ◎(できている)/○(ときどき)/△(できていない) の3段階でチェックしてみてください。
- ミスを減らす仕組みがあるか
- 締切から逆算して動けているか
- 迷ったら早めに相談できているか
- 不安やミスを正直に共有できているか
- 思い込みを外し、条件を正確に読み取れているか

2〜3分でできる簡単な作業ですが、今の自分の「強み」と「伸ばすべきポイント」が言語化されます。
そして大切なのは、一度に全部直そうとしないことです。
「今いちばん伸ばしたい行動習慣」を1つだけ選び、次の一歩をすすめましょう!
8. キャリアに迷ったら専門家に相談
ここまで読んで、「自分はどこを伸ばすべきか?」「どんな環境ならもっと成長できるのか?」と感じた人もいるかもしれません。
構造設計者のキャリアは、扱う案件・所属組織・評価軸によって大きく変わります。だからこそ、一度立ち止まって整理する時間が価値を持ちます。
「ストラボnavi」では、構造設計のキャリアに特化したアドバイザーが、あなたの強み・弱みの整理、市場で評価されるキャリアの方向性、あなたが最も成長できる環境を一緒に言語化します。
「働き方を変えたい」「もっと成長したい」という想いが少しでもあるなら、一度プロと対話してみることで、進むべき道が見えてきます。
監修者

小林 玄彦(こばやし はるひこ)
株式会社ストラボ 代表取締役
オリジナル工法の開発やブランディングにも注力し、創業期から同社の規模拡大に貢献。
2024年に株式会社ストラボを創業し、構造設計者のための成長支援プラットフォーム「ストラボ」をローンチ。
構造設計者の社会的価値を最大化することを使命とし、構造設計業界や組織、そこで働く社員が価値観を共有し、他社との差別化を図ることで、構造設計者の価値を誇りをもって伝えられるようサポートしている。
